Blender 5.2 の Thin Wall をオンにした窓ガラスは、部屋の明るさがガラスなしの約92%で、ノイズもガラスなしとほぼ同じでした。同じ部屋を厚み1cmのガラスで作ると明るさは約半分に落ち、同じサンプル数でノイズは約8倍でした。
Thin Wall を使わずに1枚の板でガラスを作ると、面の向き(法線)しだいで明るすぎにも暗すぎにもなりました。3.6 には Thin Wall が無く、厚みのあるガラスはやはり約半分の暗さでした。
Thin Wall は、Blender 5.2 LTS で Principled BSDF に追加されたオン/オフの入力です。窓ガラスのある室内を描くと暗くなりやすい、という悩みに効くのか。同じ検証機に入れた 3.6.11 と 5.2.1 LTS で、同じ部屋を描いて明るさ・ノイズ・時間を測りました。
Thin Wallとは:面を「厚さ0の薄い板」として扱う設定
5.2 のリリースノートは「Principled BSDF に新しいオン/オフの入力 Thin Wall を追加。有効にすると、その面は薄いシートとして扱われる」と説明しています。公式マニュアルによると、このモードでは厚さを0とみなし、紙・葉・窓ガラスのような薄いものに向いています。
- Subsurface Radius・Subsurface Scale・Subsurface Method は、Thin Wall では使われない(マニュアル)
- EEVEE で使うときは、Thickness を0、Thickness Mode を Slab にする(マニュアル・当サイトでは EEVEE は試していません)
- 3.6.11 の Principled BSDF には Thin Wall の入力がない(両方の版の入力の一覧を Python で読んで確認)
測り方:窓の面がガラスの部屋を5通りに作る
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 部屋 | 4×4×3m の箱。1面を丸ごと窓にして、そこにガラスを置く。壁と床は白の Diffuse |
| 光 | 空の光(一様な水色)+太陽(窓の外から斜め下へ) |
| ガラス | Principled BSDF・Transmission 1・Roughness 0・IOR 1.5 |
| 条件 | ①ガラスなし ②Thin Wall オンの1枚の板 ③厚み1cmの箱 ④1枚の板(法線が室内向き) ⑤1枚の板(法線が屋外向き) |
| 描画 | Cycles・CPU 8スレッド・512サンプル・デノイズなし・480×270・光路は既定 |
カメラは窓際から部屋の奥と床を写し、窓そのものは写していません。明るさは表示変換前の値(EXR)で測り、各条件を2回描いて時間を平均しました。検証機は Core i7-11700F。2026年9月24日測定。
結果:Thin Wallはガラスなしの92%、厚み1cmは約半分

| 条件(5.2) | 明るさ(ガラスなし比) | 床のノイズ | 描画時間 |
|---|---|---|---|
| ガラスなし | 100% | 1.2% | 24.6秒 |
| Thin Wall オン | 91.8% | 1.3% | 31.5秒 |
| 厚み1cmのガラス | 49.6% | 10.6% | 33.1秒 |
明るさは画面全体の平均。ノイズは、乱数のシードだけを変えてもう1回描き、床の範囲で同じ画素どうしの差のばらつきから1枚あたりの値を出し、床の明るさで割ったもの(陰影の変化は2枚に同じように入るので差し引かれる)。
Thin Wall の窓は、見た目もノイズもガラスなしとほとんど変わりませんでした。板ガラスは表と裏で少しずつ光を反射するので、ガラスなしより少し暗くなるのは自然です。一方、厚み1cmのガラスは部屋が約半分に暗く、同じ512サンプルでも床のざらつきが目立ちました。屈折するガラス越しの直射光は描画で届きにくいことが知られており、今回の暗さもそれと合う形ですが、原因を切り分ける実験はしていません。
時間は、同じサンプル数で Thin Wall のほうが厚み1cmより約5%短い程度でした。ノイズが約8分の1なので、同じ見た目まで回す時間の差はもっと開くはずですが、そこまでは測っていません。
Thin Wallなしの1枚の板は、面の向きで結果が逆になる
窓ガラスを平面1枚で作り、Thin Wall を使わずに透過させる作り方もよく見かけます。これは面の表と裏で結果が大きく変わりました。

| 条件(5.2) | 明るさ(ガラスなし比) | 床の明るさ(同) | 床のノイズ |
|---|---|---|---|
| 1枚の板・法線が室内向き | 85.3% | 104.4% | 4.5% |
| 1枚の板・法線が屋外向き | 42.4% | 35.5% | 6.9% |
室内向きの板では、床がガラスなしより明るくなりました。平らな板ガラスを通って床が明るくなることは現実にはないので、正しい見た目とは言えません。屋外向きでは逆に暗くなりました。1枚の板は「ガラスの中」と「外」の区別があいまいなまま屈折の計算をするため、と考えられますが、ここでは結果を示すだけにとどめます。1枚の板で窓を作るなら、Thin Wall をオンにするのが確実です。
3.6ではどうなる?
同じ部屋を 3.6.11 でも描きました。ガラスなしの条件では、明るさ(床の平均 0.8127)もノイズも 5.2 と一致しました(光の跳ね返りの回数などの設定は両方とも既定で、同じ値)。ガラスのある条件では、次のように値が違いました。
| 条件(3.6) | 明るさ(ガラスなし比) | 床のノイズ |
|---|---|---|
| 厚み1cmのガラス | 47.0% | 12.0% |
| 1枚の板・法線が室内向き | 86.7% | 4.4% |
| 1枚の板・法線が屋外向き | 35.1% | 9.4% |
3.6 でも厚みのあるガラスは約半分の暗さで、Thin Wall の代わりになる入力はありません。3.6 から 5.2 へ上げるかどうかの判断材料は3.6・4.2 が旧 LTS に入った話、ファイルの行き来の注意は3.6 と 5.2 のファイル互換を試した記事にまとめています。
まとめ
窓ガラスの室内が暗い・ざらつくときは、5.2 ならガラスの Principled BSDF で Thin Wall をオンにするのが手早い解決です。今回の部屋ではガラスなしの約92%の明るさで、ノイズもほぼ増えませんでした。測ったのは Cycles の1つの部屋だけで、葉や紙(Subsurface との組み合わせ)と EEVEE は試していません。描画を速くする設定全般はBlender のレンダリング高速化の記事、EEVEE についてはEEVEE Next の設定ガイド、基本の操作はBlender の完全入門で扱っています。

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