Blender 3.6 で作ったマテリアルを 5.2 で開いて描くと、同じファイルでも明るさが変わりました。検証機の場面では、ガラスが約21%明るくなり、Principled BSDF の既定・Sheen・Clearcoat・Subsurface は5〜8%暗くなりました。金属と Diffuse はほぼ同じです。
開いた時点で数値も書き換わります。Clearcoat 1.0 は Coat 0.25 に、Sheen 1.0 は 0.2 になりました。Subsurface の方式を新しい Random Walk に切り替えると、3.6 より約24%暗くなりました。
3.6 から 5.2 へ移るとき、ファイルが開けるかどうかの次に気になるのは「同じ見た目で描けるか」です。同じ検証機に 3.6.11 と 5.2.1 LTS を入れ、3.6 で作った1つのファイルを両方で描いて、材質ごとに明るさを比べました。
公式は「少し暗く、または明るくなる」と説明
Principled BSDF は Blender 4.0 で作り直されました。4.0 のリリースノートは「成分の重ね方全体がエネルギーを保存するようになったので、既存のマテリアルは場面によって少し暗く、または明るく描かれることがある」と書いています。同じ 4.0 で、Multiscatter GGX が既定になりました。3.6 のファイルを 5.2 で開くと、この変更をまとめてまたぐことになります。
測り方:3.6で作った球7つを両方の版で描く
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 球 | 対照の Diffuse/Principled 既定/Subsurface 1.0/ガラス(Transmission 1)/金属(Metallic 1)/Clearcoat 1.0/Sheen 1.0 |
| ファイル | 3.6.11 で作って保存。同じファイルを 5.2.1 LTS で開き、何も変えずに描く |
| 描画 | Cycles・CPU 8スレッド・256サンプル・デノイズなし・表示変換は Filmic(ファイルの設定) |
| 比べ方 | 球の中央部分の明るさ(表示変換前の値)の平均。乱数のシードを変えてもう1回ずつ描き、ばらつきと比べた |
検証機は Core i7-11700F。2026年9月24日測定。
結果:ガラスは明るく、多くの材質はやや暗く

| 球 | 5.2 の明るさ(3.6 比) |
|---|---|
| 対照の Diffuse | −0.3% |
| 金属 | ±0.0% |
| Principled 既定 | −4.6% |
| Sheen | −4.5% |
| Clearcoat | −6.9% |
| Subsurface | −7.8% |
| ガラス | +21.1% |
シードを変えて描き直したときの差は、どの球も0.2%以内。上の差はばらつきではありません。
並べて見ると気づきにくい程度ですが、差の分布でははっきり分かれました。Principled 既定・Subsurface・Clearcoat は縁ほど暗く、ガラスは全体が明るくなりました。Sheen は縁が明るく中央が暗くなり、材質によって変わり方が違います。公式の「少し」に対して、ガラスの約21%は大きめです。3.6 の作品を 5.2 で描き直すなら、ガラスと肌(Subsurface)は必ず並べて確かめるのが安全です。
開いた時点で数値も書き換わる
5.2 で開いたファイルの Principled BSDF の値を読むと、次のように変わっていました。
| 3.6 で入れた値 | 5.2 で開いた後 |
|---|---|
| Clearcoat 1.0 | Coat Weight 0.25 |
| Sheen 1.0 | Sheen Weight 0.2(Sheen Roughness 0.5) |
| Subsurface 1.0 | Subsurface Weight 1.0・Subsurface Scale 1.0 |
| Subsurface の方式 Random Walk | Random Walk (Skin) |
| Specular 0.5 | Specular IOR Level 0.5 |
| IOR 1.45・分布 GGX・表示変換 Filmic | そのまま |
では、5.2 で 1.0 に戻せば 3.6 と同じになるのか。実際に Coat Weight と Sheen Weight を 1.0 に戻して描くと、今度は 3.6 より Clearcoat が約5.0%、Sheen が約5.2% 明るくなりました。開いたまま(それぞれ約6.9%・4.5% 暗い)と比べて、3.6 からの離れ方は同じくらいです。数値を戻しても 3.6 の見た目にはならず、どちらが近いかは明るさの平均だけでは決められません(変換の係数の根拠は公式の文では確かめていません)。
なお、5.2 で新しく作るファイルは既定が違います。Principled BSDF の IOR は1.5、分布は Multiscatter GGX、表示変換は AgX でした(3.6 は IOR 1.45・GGX・Filmic)。古いファイルと新しいファイルを並べて比べるときは、表示変換もそろえてください。
Subsurfaceの方式を新しいものに替えると約24%暗い
開いた直後の Subsurface の方式は Random Walk (Skin) でした。これを新しい Random Walk に切り替えて描くと、3.6 より約24%暗くなりました(開いたままの Skin では約8%)。5.2 のリリースノートによると、Random Walk の半径の尺度が他のレンダラーに合わせて変わっています。方式を替えるなら、半径や Scale を合わせ直す前提で考えたほうがよさそうです。
まとめ
3.6 のファイルは 5.2 で開けても、同じ見た目になるとは限りません。今回の場面では、ガラスが約21%明るく、よく使う材質の多くが5〜8%暗くなりました。測ったのは Cycles の1つの場面だけで、照明や材質の設定が変われば差の大きさも向きも変わりえます。EEVEE は試していません。移行そのものの判断は3.6・4.2 が旧 LTS に入った話、ファイルが開けるかは3.6 と 5.2 のファイル互換を試した記事、5.2 で入ったガラスの新機能はThin Wall を窓ガラスで測った記事、基本の操作はBlender の完全入門で扱っています。

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