Blender 5.2 の新しい布(Cloth Dynamics・実験的)は、同じ布を同じ球に落とした計算が、従来の Cloth の約2.7倍速く終わりました(72フレームで0.88秒 対 2.37秒)。球へのめり込みはどちらもありませんでした。
ただし既定のままだと紙のように硬く、従来の布とは違う垂れ方をします。Bendiness を0.1〜0.5の間で上げると柔らかくなり、試した1・10・100ではほぼ同じ形でした。
Blender 5.2 LTS で、ジオメトリノードを土台にした新しい物理(髪と布)が「実験的」として入りました。これまでの Cloth モディファイアと比べて速いのか、同じように垂れるのか。同じ検証機の 5.2.1 と 3.6.11 で、同じ布を同じ球に落として測りました。
新しい布の正体:同梱のアセット「Cloth Dynamics」
5.2 のリリースノートによると、新しい布は Cloth Dynamics というモディファイア兼ノードグループで、どのメッシュにも足すだけで布のように動きます。ピン留め・伸び・曲がりの調整・破れにも対応しています。中では 5.2 で入った XPBD Solver ノードが計算しています。公式は「広く試されるまで設計を固められないので実験的。次の版で壊さないよう努めるが、確約はできない」としています。
本体は Blender に同梱の geometry_nodes_dynamics_assets.blend に入っていて、アセットとして入っているのは Cloth Dynamics (Experimental)・Hair Dynamics・Collider・Custom Force・Custom Effector・Set Effector の6つでした(当サイトでファイルを読んで確認)。ぶつかる相手には Collider を足し、その相手を入れたコレクションを布の「Effectors Collection」に渡します。
測り方:同じ布を同じ球に落とす
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 布 | 2m四方・1,764頂点。高さ2mから落とす |
| 球 | 半径0.6m(床なし) |
| 新しい布 | Cloth Dynamics(既定のまま)+球に Collider |
| 従来の布 | Cloth モディファイア(既定・品質5)+球に Collision |
| 計算 | 72フレーム(3秒ぶん)を順に進めた時間。CPU 8スレッド・画面なし。各3回 |
検証機は Core i7-11700F。2026年9月24日測定。めり込みは、全72フレームで球の中に入った頂点の数を数えました(面どうしの交差までは見ていません)。形は最後のフレームの全頂点の座標で比べました。
結果:新しい布は約2.7倍速い
| 条件 | 72フレームの計算時間 | 球へのめり込み |
|---|---|---|
| 5.2 新しい布(既定) | 0.88秒 | 0頂点 |
| 5.2 従来の Cloth | 2.37秒 | 0頂点 |
| 3.6 従来の Cloth | 3.09秒 | 0頂点 |
3回の差は最大0.02秒。
新しい布は、同じ 5.2 の従来の Cloth より約2.7倍速く終わりました。従来の Cloth どうしでは、5.2 が 3.6 より約23%速く、最後のフレームの全1,764頂点の座標が一致しました(小数点以下5桁まで)。同じ手順で作った場面なら、従来の Cloth は 5.2 でも 3.6 と同じ形に落ちたということです(3.6 で保存したファイルを 5.2 で開いて確かめたわけではありません)。
既定は紙のように硬い:Bendinessで性質が変わる

速さだけでは比べられません。見た目がはっきり違いました。従来の Cloth は球に沿って垂れ、細かいしわが寄ります。新しい布の既定は、紙のように硬く、大きな折り目が数本入るだけでした。Bendiness(大きいほどよく曲がる)の既定が0だからです。
| Bendiness | 形(最後のフレーム) | 計算時間 |
|---|---|---|
| 0(既定)・0.01 | 紙のように硬い(2つは同じ形) | 0.87〜0.89秒 |
| 0.1 | わずかに垂れる | 0.87秒 |
| 0.2・0.3 | 大きく垂れる | 0.87〜0.90秒 |
| 0.5 | 球に張り付いて包み込み、裾が球の下へ回り込む | 0.88秒 |
| 1・10・100 | 0.5 とほぼ同じ(0.5 との差は平均 約2mm)。3つどうしは最大0.7mm以下の差 | 0.88〜0.89秒 |
計算時間は Bendiness によらずほぼ同じでした。形が大きく変わるのは0.1〜0.5の狭い範囲で、試した1・10・100ではほとんど変わりませんでした(その間の値や、実装での扱いは確かめていません)。従来の Cloth と同じ布を作る規準が無いので、「同じ材質どうしで何倍速いか」は言えません。言えるのは、同じ場面を既定のまま回したときの速さと、性質の違いまでです。
Pythonで組むときの注意:入力の書き方が変わった
今回はスクリプトで組みましたが、5.2 ではジオメトリノードのモディファイアの入力に modifier["Socket_7"] = … で値を入れようとするとエラーになりました。5.2 の Python API のリリースノートにあるとおり、modifier.properties.inputs.Socket_7.value = … と書きます。4.x までのスクリプトを 5.2 で使うときは書き換えが要ります。
まとめ
5.2 の新しい布は、今回の場面では従来の約2.7倍速く、めり込みもありませんでした。一方で既定の性質が違い、従来の Cloth の代わりにそのまま置き換えられるものではありません。実験的な機能なので、次の版で変わる可能性もあります。自己衝突や頂点を増やした場合、髪(Hair Dynamics)は測っていません。
3.6 から 5.2 へ移るかどうかは3.6・4.2 が旧 LTS に入った話、ファイルの互換は3.6 と 5.2 のファイル互換を試した記事、マテリアルの見た目の違いはPrincipled BSDF を 3.6 と 5.2 で比べた記事、基本の操作はBlender の完全入門にまとめています。

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