オープンソースの動画生成AI「Wan 2.1」を使えば、ローカル環境でアニメ風の動画を生成できます。この記事では、ComfyUIでの環境構築から、2Dアニメ特化のプロンプト設計、リミテッドアニメーション風のコマ落ち再現まで、実践的なノウハウを徹底解説します。

Wan 2.1とは?アニメ動画生成に最適な理由
Wan 2.1は、テキストや画像から動画を生成するオープンソースAIモデルです。1.3B(軽量)と14Bの2つの大きさがあり、2025年2月に Apache 2.0 ライセンスで公開されました(ComfyUI 公式)。
商用APIと違って生成の処理を自分のPCで行うので、プロンプトや画像を生成サービスに送らずに済むのもメリットです(モデルやカスタムノードの取得では通信が発生します)。ただし14Bはモデルが大きいので、GPU の VRAM の準備が重要です。
| モデル | 公式の対応解像度 | VRAM について公式が書いていること | 本体のファイル(ComfyUI 向け) |
|---|---|---|---|
| T2V-1.3B(軽量) | 480P(720P も出せるが不安定・480P を推奨) | 8.19GB で動く(Wan 公式)/軽量版は8GBで動く(ComfyUI 公式) | fp16 2.8GB |
| T2V-14B | 480P・720P | 記載なし | fp16 28.6GB/fp8 14.3GB |
| I2V-14B(480P 用と720P 用は別モデル) | 480P/720P | 記載なし | fp16 32.8GB/fp8 16.4GB |
14B の必要量は Wan 公式にも ComfyUI 公式にも書かれておらず、当サイトでも測っていません。本体のファイルは fp8 でも14.3GB(I2V は16.4GB)あり、VRAM 12GB の GPU には載り切りません。ComfyUI は載り切らない分をシステムのメモリへ退避して動かせますが、退避した分だけ遅くなります(仕組みはVRAM 不足のときの退避の費用(画像生成で実測))。出典=Wan 2.1 公式・ComfyUI 公式・ComfyUI 向けの配布ファイル(2026年10月9日確認)。
fp16 と fp8 のどちらを使うか
ComfyUI 公式の手順は本体に fp16 を使い、bf16 より良い結果だったとしています(fp8 との比較は書かれていません)。当サイトは fp16 と fp8 で線や色の違いを比べていません。VRAM が16GB以下なら、本体が半分の大きさの fp8 から試すのが現実的です。
VRAM 16GB以上のGPUを選べるBTOパソコンをサイコムで見る![]()
ComfyUI環境構築:必要モデルの配置
Wan 2.1はComfyUI上で動作させるのが最も柔軟です。以下の4ファイルをダウンロードして所定のフォルダに配置します。
wan2.1_t2v_14B_fp16.safetensors を models/diffusion_models/ に配置。VRAM が少なければ fp8 版の wan2.1_t2v_14B_fp8_e4m3fn.safetensors、まず試すなら1.3B の wan2.1_t2v_1.3B_fp16.safetensors でも同じ場所です。T2V(テキスト→動画)用とI2V(画像→動画)用は別ファイルなので注意。
umt5_xxl_fp8_e4m3fn_scaled.safetensors を models/text_encoders/ に、wan_2.1_vae.safetensors を models/vae/ に配置。
画像から動画を生成するI2Vタスクには clip_vision_h.safetensors が追加で必要。models/clip_vision/ に配置します。
アニメ特化プロンプト設計:画風の指定とネガティブプロンプト
Wan 2.1 で2Dアニメの見た目を狙うときは、プロンプトで画風を指定し、既定のネガティブプロンプトを見直すのが基本です(どれだけ効くかを当サイトでは比べていません)。
プロンプトの公式(Alibaba Cloud のブログ)
Subject(被写体)+ Scene(背景)+ Motion(動き)+ Aesthetic Control(光源・照明・画角・カメラ)+ Stylization(画風)
Stylization に「In a 2D anime style, cel-shaded, flat shading, anime screencap」のような画風の語を入れます(本記事の例)。
さらに重要なのがネガティブプロンプトです。3Dっぽさを抑えたいときは、次のような語をネガティブに入れます(本記事の例・効き方は当サイトでは比べていません)。
3D, Blender, Unreal Engine, Octane Render, CGI,
photorealistic, depth of field, realistic shadows,
deformed, artifacts, motion blur
既定のネガティブプロンプトに「画風」が入っている
Wan 2.1 の公式のコードの既定のネガティブプロンプト(sample_neg_prompt)には、「风格(画風)」「作品」「画作(絵画)」が含まれています(Wan 2.1 の shared_config.py)。画風を抑える方向の語なので、アニメ風を狙うときはそのまま使わず、上の例に差し替えるか、この3語を外してから使います。
リミテッドアニメーション(コマ落ち感)の再現
日本のアニメでよく使われる「3コマ打ち」(1秒24コマの映像で同じ絵を3コマ続ける=1秒に8枚)のコマ落ち感を出すと、アニメらしく見えます。しかしComfyUIのfps設定を単に下げるだけではスローモーション動画になるため、別のアプローチが必要です。
Wan 2.1 の公式のコードの既定は16fps(sample_fps = 16)です。まずはそのまま生成します。
カスタムノードの ComfyUI-VideoHelperSuite にある Select Every Nth で select_every_nth を2にし、2枚に1枚だけを残します(公式の説明=N 枚ごとに最初の1枚を残し、残りを捨てる)。
同じパックの Video Combine で、frame_rate(1秒に表示する枚数)を8にして書き出します。16fpsの半分の枚数を8fpsで流すので、動きの速さと長さは元のままで、1秒に8枚のカクつきになります。
VRAM不足を克服する最適化テクニック
14B は本体だけで fp8 でも14.3GB あり、VRAM 12GB の GPU では退避が増えて遅くなります。次の方法は、速さを取り戻したり本体を小さくしたりするためのものです(出典=ComfyUI-TeaCache の公式・SageAttention の公式・ComfyUI 向けの配布ファイル)。
| 手法 | 効果 | 注意点 |
|---|---|---|
| TeaCache | 公式の推奨値で約1.6〜1.9倍(retention モードで約2〜2.3倍) | 推奨のしきい値(rel_l1_thresh)は 1.3B で0.08・14B で0.2。速くするほど画質が落ちやすい |
| SageAttention | attention の計算を8ビットにして速くする(公式がうたうのは速さ) | 別にインストールし、ComfyUI を --use-sage-attention 付きで起動する |
| fp8 の本体 | 本体のファイルが半分(14B で28.6GB→14.3GB) | fp16 との画質の差は当サイトでは比べていない |
それでも足りないときの選択肢は3つです。①モデルを小さくする(1.3B は公式で8.19GB・Wan 2.2 の5B は ComfyUI の退避で8GBに収まるとされる=下の節)②VRAM 16GB以上の GPU にする(考え方はローカルAI動画生成のGPU/VRAM選び)③クラウドの GPU を借りる。価格の底値と買い時はRTX 5070 Tiの価格推移と買い時ガイドを、今すぐ大容量VRAMが必要な場合はGoogle Colab Pro(A100クラウドGPU)の使い方を参考にしてください。
📘 「fp8にすればVRAMが減る」を自分の数字で確かめたい方へ:当サイト運営者がZennで公開している電子書籍『画像生成AI・ローカルLLMを“安く速く”動かす実測ガイド』(有料・500円/第1〜2章は無料公開)で、量子化・オフロード・スライスの効果を RTX 4070 Ti SUPER(VRAM 16GB)で実測し、通説と答え合わせをしています。12GB環境でのOOMに、GPU買い替えとクラウドのどちらで対処すべきかも損益分岐の式で判断できます。
Wan 2.2が出たいま、アニメ動画は2.1と2.2どちらで作る?
結論から言うと、これから始めるならWan 2.2の5B(TI2V)だ。ComfyUI 公式の Wan 2.2 の手順では退避込みで8GBに収まるとされ(720P・当サイトでは測っていない)、1モデルでテキストからも画像からも動かせる。本記事の2.1向けプロンプト設計はそのまま通用する。
2.1から何が変わったのか
| 観点 | Wan 2.1 | Wan 2.2 |
|---|---|---|
| モデル構成 | T2VとI2Vで別モデルが必要 | TI2V-5Bが1本で両対応 |
| 内部構造 | 単一モデル | A14B(T2V・I2V)はMoE(Mixture-of-Experts)=ノイズの多い段と少ない段で別のエキスパートを使う。TI2V-5B は圧縮率の高い VAE を使う別の構成 |
| 動きの質 | 基準 | 学習データを画像+65.6%・動画+83.2%に増やし、動き・意味・見た目の汎化が向上(公式) |
| VRAM(公式の条件) | T2V-1.3B=8.19GB(480P・Wan 公式) | TI2V-5B=ComfyUI の退避込みで8GBに収まるとされる(720P・24fps)/Wan 公式のスクリプトでは24GB以上 |
| ComfyUI | ネイティブ対応・公式テンプレートあり | ネイティブ対応・公式テンプレートあり |
アニメ用途で効くのは「モデルが1本で済む」こと
アニメ風の動画はまず1枚の絵を作り込んでから動かす(I2V)進め方が結局きれいに出ます。2.1ではT2VとI2Vでモデルを入れ替える必要がありましたが、2.2のTI2V-5Bなら同じモデルのまま静止画→動画に進めるので、ワークフローを2本持たなくて済みます。
それでもWan 2.1を使う場面はある
2.1を捨てる必要はない。すでに2.1で詰めたワークフローとLoRA資産がある場合、乗り換えのコストのほうが大きいことは普通にある。特に本記事で扱っているような画風の指定・ネガティブプロンプトの見直しとリミテッドアニメーションの再現は、モデルのバージョンではなくプロンプトと後処理の技術なので、2.1のままでも生かせる。
判断の目安:これから環境を作るなら2.2(5B)。すでに2.1で安定して出せているなら、急いで移行しなくてよい。
💡 Wan 2.2のネイティブ導入手順とワークフローの中身はWan 2.2でAI動画生成|ComfyUIネイティブ対応の導入手順とWan 2.1からの進化点で解説しています。ComfyUI本体の導入からやり直す場合はComfyUIの使い方完全入門から。
まとめ:ローカルPCがアニメ制作スタジオになる
Wan 2.1とComfyUIを組み合わせれば、商用APIに頼らず自分のPCだけで本格的なアニメ風動画が作れます。プロンプトで画風を指定し、後処理でコマ落ち感を出す手順は、Wan 2.2 に移っても使えます。
なお、音声つきの生成に対応した Wan 2.5 は Alibaba Cloud のクラウドで使うモデルです(Alibaba Cloud のブログ)。Wan-AI の Hugging Faceのモデル一覧(2026年10月9日確認)にあるのは Wan 2.2 の系統までで、Wan 2.5 以降の重みはありません。

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