Adobe Media Encoder のプリセット一覧は、開くと途方に暮れる量が並んでいる。インストール先で find . -iname "*.epr" | wc -l を回すと 538本あった。中身は .epr というファイルで、置き場所のフォルダ名は 4E49434B_48323634 のような16進の羅列だ。これを読める形に直すと、プリセットの並び方の理屈が見えてくる。
検証環境と方法:Windows 11 / Adobe Media Encoder 2026(26.3.2)。インストールディレクトリ配下の .epr を全件走査して数え、XMLとして解析した。本数・内訳・タグ構成はすべて実測値。測っていない範囲=GUI上の表示や分類、実際にエンコードした結果、他バージョンでの再現。
結論(Media Encoder 2026 実測)
- 同梱プリセットは 538本(
MediaIO\systempresets\に 537本 + 別階層に1本) - フォルダ名は FourCC の16進表記。
4E49434B_48323634はNICK+H264 - 最多は MXF 系(152本)、次いで XDCAM(117本)。H.264 は43本
.eprは XML だが、設定値は識別子と値の対で入っており、素直に読み書きできる形ではないPresetCreatorAppに「Beta」を含む文字列を持つものが 67本(12.5%)ある
フォルダ名の16進は何を表している?
MediaIO\systempresets\ の下は39個のフォルダに分かれていて、名前はすべて 8桁_8桁 の16進だ。ASCII として読むと意味が出る。
| フォルダ名 | 読むと | 形式 | 本数 |
|---|---|---|---|
4d584620_444d5846 |
MXF + DMXF |
MXF | 152 |
58444341_4d584658 |
XDCA + MXFX |
XDCAM | 117 |
4E49434B_48323634 |
NICK + H264 |
H.264 | 43 |
3F3F3F3F_4D6F6F56 |
???? + MooV |
QuickTime | 35 |
50324D58_4D584620 |
P2MX + MXF |
P2 MXF | 23 |
4C4F5249_6D706732 |
LORI + mpg2 |
MPEG-2 | 18 |
4A454646_48455643 |
JEFF + HEVC |
H.265 | 10 |
564C4144_666C7620 |
VLAD + flv |
FLV | 6 |
後ろ半分は形式名でそのまま読める。おもしろいのは前半分で、NICK・LORI・JEFF・VLAD と人名が並ぶ。FourCC は4バイトあれば何でもよいので、書き分けのために開発者名が使われているように見える。H.264 のプリセットは NICK のフォルダに入っている、というわけだ。
⚠ 人名だという解釈は当方の推測で、Adobe の命名意図を確認したわけではない。確実なのは16進をASCIIとして読むとこの文字列になるところまでだ。
数の偏りは何を意味している?
MXF 系(152 + 23 + 8)と XDCAM(117)だけで全体の半分以上を占める。どちらも放送・業務用の収録フォーマットだ。一方で Web で使う H.264 は43本、H.265 は10本にとどまる。
つまり数の重心は放送・業務用の収録フォーマット側にある。Web用途で使う範囲はごく一部だ。「多すぎて選べない」と感じるのは正しくて、大半は自分に関係がない。⚠ Adobeがどういう意図でこの構成にしたかは確認していない。言えるのは本数の分布までである。
H.264 の43本の中身を見ると、Match Source 系のほかに Adobe Stock HD with Audio (20Mbps) のような納品先の仕様がそのまま名前になっているものが並ぶ。目的が決まっているなら、この命名から逆引きするのが早い。
.epr は編集できる?
ファイル自体はただのXMLだ。エディタで開ける。
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<PremiereData Version="3">
<ExportXMPOptionKey>10</ExportXMPOptionKey>
ただし「XMLだから中のビットレートを書き換えられる」とはならない。中身を解析すると、設定は <TargetBitrate> のような名前の付いたタグでは持っていない。実際にあるのはこういう構造だ。
| 要素 | 出現数 | 役割 |
|---|---|---|
ExporterParam |
75 | 設定1件ぶんの入れ物 |
ParamIdentifier |
75 | ADBEAudioTabGroup のような内部識別子 |
ParamValue |
30 | 値(多くは空で、親側に持つ) |
ParamArbData |
2 | 任意データの塊 |
1本あたり 677行(H.264 の Adobe Stock HD プリセットの場合)で、識別子と型と値が延々と並ぶ。読めるが、意味を追うには識別子の対応表が要る。⚠ 手編集して読み込ませる実験はしていないので「編集できない」とは言えない。言えるのは目的の設定がどこにあるか特定しづらいことまでだ。
なおプリセット名は537本すべて(100%)がローカライズキー形式で入っている。
($$$/AME/EncoderHost/Presets/36d06880-.../PresetName=Adobe Stock HD with Audio (20Mbps))
= の後ろが英語のフォールバック名だ。Adobe製品でおなじみのローカライズキー形式なので、表示名は言語リソース側から与えられる作りになっている。⚠ 実際に表示言語を切り替えて確認したわけではない。ただ、ファイルの中に入っているのは英語名とキーであって、画面の日本語名ではないことは確かだ。
作成元アプリ名の欄に「Beta」が残っている
PresetCreatorApp という要素に、そのプリセットを作ったアプリ名が入っている。537本ぶん集計するとこうなった。
| PresetCreatorApp | 本数 |
|---|---|
| (要素なし) | 369 |
| Adobe Media Encoder | 83 |
| 🔴 Adobe Media Encoder (Beta) | 51 |
| (空文字) | 18 |
| 🔴 Premiere Pro (Beta) | 16 |
67本(12.5%)で、この欄に「Beta」を含む文字列が入っている。⚠ 分かるのはフィールドにその文字列が書かれていることまでで、実際にBeta版で作られたと確定はできない(Adobeの生成記録と突き合わせたわけではない)。⚠ また中身が不安定という意味でもない。動作への影響は確認していない。
よくある質問
Media Encoder 2026 では .epr が 538本ありました。内訳は MediaIO\systempresets\ 配下に537本、Settings\EncoderPresets\ に1本です。前者は39個のフォルダに分かれており、フォルダ名は FourCC を16進で表したものです。
.epr は XML ですが、設定は TargetBitrate のような名前付きタグではなく、ParamIdentifier(ADBEAudioTabGroup 等の内部識別子)と値の対で保持されています。1本あたり数百行あり、識別子の意味を知らないと変更箇所を特定できません。⚠ 実際に手編集して読み込ませる検証は行っていないため、可否そのものは未確認です。
数の上では放送・業務用フォーマットに偏っています。実測では MXF 系が183本、XDCAM が117本で、この2つだけで全体の半分以上を占めます。Web用途の H.264 は43本、H.265 は10本です。個人の書き出しで触る範囲はごく一部なので、形式を先に決めてから絞り込むのが早道です。
8桁ずつASCIIに変換します。例えば 4E49434B_48323634 は NICK + H264 となり、H.264 用のプリセットが入っています。後半は形式名ですが、前半には NICK・LORI・JEFF・VLAD といった人名らしき文字列が使われています(命名の意図はAdobeに確認していません)。
プリセット名は537本すべてがローカライズキー形式(($$$/…/PresetName=英語名))で保存されています。= の後ろが英語のフォールバック名です。ファイル内にあるのはキーと英語名なので、画面の日本語表示名で検索しても一致しません(表示言語を切り替えての確認は本記事では行っていません)。
まとめ
Media Encoder の538本は、数の上では放送・業務用フォーマットに偏っている。MXF と XDCAM だけで半分を超え、Web用の H.264 は43本しかない。「多すぎる」のではなく自分向けが少ないと捉えると選びやすくなる。
フォルダ名の16進は FourCC で、ASCIIに直せば形式が分かる。.epr は XML だが、設定は内部識別子と値の対で入っており目的の項目を特定しづらい。⚠ 手編集して読み込ませる検証はしていないので「編集できない」とまでは言えない。

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