【初心者必見】3Dモデリングの基礎:Extrude・Thickness・Offsetの違いと法線を完全解説【2025年版】
本記事では、これらの操作の背後にある計算ロジックと、すべての基準となる「法線(Normal)」の仕組みを、BlenderやMayaの実装例を交えて徹底解説します。この記事を読めば、ソフトウェアごとの用語の違いに悩まされることなく、3Dモデリングの基礎を確実に理解できます。
1. 序論:「Excrude」ではなく「Extrude」
まず最初に、用語の誤解を解いておきましょう。検索クエリなどで見かける「Excrude」という用語は3Dモデリングには存在しません。
正しくは Extrude(エクストルード) です。ラテン語の「押し出す」に由来し、工業的な押出成形のように、断面を特定の方向に押し出して体積を作る操作を指します。
この間違いはよくある検索ミスですが、3D業界では完全に「Extrude」が標準用語となっています。ツールバーでも「Extrude」と表記されているため、正しい用語を覚えておきましょう。
2. すべての基準「法線(Normal)」を理解する
「厚み」や「オフセット」がどのように計算されるかを知るには、3D空間における「方向」の定義、すなわち法線(Normal)の理解が不可欠です。
2.1 法線とは何か?(ウニの棘のアナロジー)
ポリゴン(面)自体には、本来「表と裏」の区別はありません。そこに「こちらが外側(表)である」という定義を与えるベクトルデータが法線です。
初心者には「ウニの棘」や「垂直に伸びる毛」をイメージすると分かりやすいでしょう。面に対して垂直に突き出た矢印が、光の反射や押し出しの方向を決定します。
- 編集モード(Edit Mode)に入る
- オーバーレイ設定(Overlays)を開く
- 「Normals」にチェックを入れる
- 青い矢印(法線ベクトル)が各面から伸びているのが見えます
2.2 3D制作における法線の役割
法線は主に以下の2つの役割を担います。
- シェーディング(陰影計算): 光が当たった際の明るさを決定します。法線が光源を向けば明るく、逸れれば暗くなります。
- モデリング操作の方向決定: 「Extrude」や「Thickness」を行う際、コンピュータはこの法線の方向(プラス方向)を基準に移動を行います。
3. Thickness(厚み)の正体とアルゴリズム
Extrude(押し出し)操作において、移動距離として定義されるのがThickness(厚み)です。しかし、ここには「均一な厚み」という数学的な難問が存在します。
3.1 「均一な厚み(Even Thickness)」の問題
単純に各面を法線方向に移動させると、角(コーナー)部分で面同士が離れてしまったり、斜めの部分が薄くなってしまったりします。
Blenderなどのソフトには、この問題を解決する「Even Thickness」オプションがあります。これをONにすると、角の部分の移動量を自動補正し、どこでも壁の厚さが一定になるように再計算します。
ただし、鋭角な部分で補正をかけると、頂点が極端に飛び出す「スパイク(アーティファクト)」が発生することがあるため、Clamp(クランプ)機能で制限をかける必要があります。
3.2 実務での推奨設定
初心者がExtrudeを使う際の推奨設定は以下の通りです:
- Even Thickness: ON – 均一な厚みを保つ
- Clamp: 0.5〜2.0 – スパイクを防ぐ(形状により調整)
- Offset: 0または1 – 用途に応じて選択
4. 最大の混乱ポイント「Offset(オフセット)」の二重定義
「Offsetの違い」という問いに対する答えは、使用しているソフトウェアや文脈によって劇的に変わります。業界では大きく分けて2つの意味で使われています。
4.1 パターンA:位置のシフト(Blender型)
BlenderのSolidifyモディファイアなどで見られる定義です。厚みを生成する際、「元の面を基準にどこに配置するか」を制御します。
- Offset = -1.0 (Inside): 法線の逆(内側)に厚みを作る。衣服や内壁向け。
- Offset = 0.0 (Center): 元の面を中心に両側へ広げる。ガラス板など向け。
- Offset = 1.0 (Outside): 法線の正方向(外側)に厚みを作る。装甲や被覆向け。
4.2 パターンB:面内のインセット(Maya型)
MayaのExtrudeツールなどで見られる定義です。法線方向への移動ではなく、面内での拡大・縮小(Inset)を指します。
- 値を増やすと面が内側に縮小し、先細りの形状になります。
- 「窓枠を作りたい」場合はこちらの機能を、「壁の厚みの位置を変えたい」場合はパターンAの機能を求めていることになります。
チュートリアルを見る際は、どのソフトウェアの話をしているのかを必ず確認しましょう。「Offsetを増やす」という同じ言葉でも、BlenderとMayaでは全く逆の結果になることがあります。
5. ソフトウェア別・機能比較表
主要ソフトウェアにおける用語の実装の違いをまとめました。
| ソフトウェア | 機能名 | Thicknessの意味 | Offsetの意味 |
|---|---|---|---|
| Blender | Solidify Modifier | 壁の厚さ(絶対値) | 位置シフト(-1〜1) |
| Maya | Extrude | 法線方向への移動距離 | 面のインセット(縮小/拡大) |
| ZBrush | Extract | 抽出する厚み (Thick) | Double (ONでOffset 0相当) |
| 3ds Max | Shell Modifier | 壁の厚さ | Inner/Outer Amount |
| Cinema 4D | Cloth Surface | Thickness設定 | 位置シフト |
6. よくあるトラブルと解決策
6.1 法線の反転 (Flipped Normals)
モデルの一部が黒く見えたり、厚みが逆に生成される場合、法線が裏返っている可能性が高いです。
解決策(Blender):
- 全選択(Aキー)
- Shift+N を押す(Recalculate Outside)
- すべての法線が外側を向くように自動修正されます
確認方法: ビューポート設定で「Face Orientation」をONにし、全て青色(表)になっているか確認する習慣をつけましょう。赤色の面があれば、そこは裏返っています。
6.2 自己交差 (Self-Intersection)
曲率の高い凹面に対して厚みをつけると、内壁が突き抜けて形状が破綻します。
解決策:
- Thicknessを減らす
- Offsetの方向を「外側(Outside)」に変更して空間が広がる方向へ厚みをつける
- 細かくメッシュを分割してから厚みをつける
6.3 スケールの不一致
オブジェクトに拡大・縮小を適用したまま(Scale値が1でない状態)でExtrudeすると、厚みが歪んで適用されます。
解決策(Blender):
- オブジェクトモードで対象を選択
- Ctrl+A → 「Scale」を選択
- Scale値が(1, 1, 1)にリセットされます
1 法線を可視化せよ:作業中は「法線のヒゲ(Display Normals)」を表示し、向きを常に意識する。
2 スケールを適用せよ:Extrude前に必ず「Apply Scale」を行い、縮尺を(1,1,1)にリセットする。これを忘れると厚みが歪む原因になります。
3 用語の違いを知る:使っているツールの「Offset」が「位置調整」なのか「インセット」なのかを見極めることが、脱初心者の第一歩です。
4 小さくテストする:いきなり複雑な形状に適用せず、まずはシンプルな立方体で各パラメータの挙動を確認しましょう。
7. 次のステップ:実践で学ぶ
ここまで理解できたら、実際に手を動かして確認してみましょう。以下の練習課題がおすすめです:
- コップを作る:円柱にSolidifyを適用し、Offset値を変えて厚みの位置を確認
- 窓枠を作る:平面からExtrudeし、Inset機能で枠を作成
- キャラクターの服:ボディメッシュからSolidifyで服の厚みを生成
これらの基礎を押さえることで、より複雑なモデリング作業もスムーズに進められるようになります。

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