「自分専用のAIアシスタントを作りたいが、Gemini GemsとClaude Projects、どちらを使うべきか?」
2026年現在、エンジニアや生成AI活用者の間でこの議論が白熱しています。両者とも「独自の知識(ナレッジベース)を持たせることができる」という点では同じですが、その裏側で動いている「記憶の仕組み」は全くの別物です。
結論から言えば、「大量の生データを丸ごと読ませたいならGemini」、「整理されたドキュメントからピンポイントで回答させたいならClaude」が正解です。
本記事では、技術的な調査に基づき、両者のアーキテクチャの違いと、AIの性能を極限まで引き出すための「ナレッジベース構築の技術」を深掘りします。
Gemini Gems vs Claude Projects:決定的な違いは「記憶の仕組み」
Googleの「Gemini Gems」とAnthropicの「Claude Projects」。どちらもファイルをアップロードしてAIに参照させる機能ですが、その処理プロセスは大きく異なります。エンジニア視点で言えば、「インコンテキストラーニング」か「RAG(検索拡張生成)」かの違いです。
Gemini Gems:圧倒的物量で殴る「インコンテキストラーニング」
Gemini(特に1.5 Proモデル)の最大の特徴は、最大200万トークンという広大なコンテキストウィンドウです。
Gemini Gemsにアップロードされたファイルは、基本的にすべてアクティブなメモリ(コンテキスト)上に展開されます。これは、AIが本を一冊丸ごと暗記した状態で会話するようなものです。
- メリット: データ全体の「文脈」や「隠れた相関関係」を理解するのが得意。
- デメリット: 毎回大量のトークンを処理するため、API利用などの場合はコストへの配慮が必要(Gems利用時は定額内)。
Claude Projects:整理された引き出し「RAG的アプローチ」
一方、Claude Projectsのコンテキストウィンドウは通常200kトークンです。プロジェクトにはそれ以上のデータをアップロードできますが、全てを一度に読み込んでいるわけではありません。
Claude Projectsは、プロンプトに関連する情報を動的に検索(Retrieval)し、必要な部分だけをコンテキストに読み込む「RAG(Retrieval-Augmented Generation)」に近い挙動をします。
- メリット: 情報が整理されていれば、非常に正確でハルシネーション(嘘)の少ない回答ができる。
- デメリット: 検索に引っかからない情報は「存在しない」ものとして扱われるリスクがある。
| 機能 | Gemini Gems | Claude Projects |
|---|---|---|
| 得意な処理 | 大量の生ログ解析、動画・音声、全体要約 | コーディング、規約に基づく文書作成 |
| メモリ方式 | 全展開 (In-Context Learning) | 動的検索 (RAG-like) + コンテキスト |
| ファイル戦略 | 巨大な1つのファイルでもOK | 小さなファイルに分割推奨 |
| コンテキストウィンドウ | 最大200万トークン | 200kトークン(標準) |
| マルチモーダル対応 | 動画・音声・画像対応 | 主にテキスト・画像 |
エンジニア必見!AIの性能を引き出すナレッジベース(KB)構築のコツ
AIに渡すデータ(ナレッジベース)は、ただPDFを放り込めばいいわけではありません。ここからは、AIのトークン消費を抑えつつ、認識精度を高めるためのテクニカルなハックを紹介します。
1. ファイル形式の罠:JSONより「TSV・Markdown」を選べ
エンジニアは構造化データとしてJSONを好みますが、LLM(大規模言語モデル)にとってJSONは「トークンの無駄遣い」です。
[
{"id": 1, "name": "Gemini", "type": "Multimodal"},
{"id": 2, "name": "Claude", "type": "Text-focused"}
]
上記のようなJSONは、{, ", } などの記号だけで大量のトークンを消費します。AIに知識として与えるだけなら、Markdownの表形式やTSV(タブ区切り)の方が圧倒的に高効率です。
構造(スキーマ)が複雑でない限り、ナレッジベースにはMarkdown形式を採用しましょう。人間にも読みやすく、AIのトークン節約にもなり、結果として「より多くの情報」を記憶させることができます。
2. ファイル分割戦略:One Big File vs Many Small Files
ここで、先ほどのアーキテクチャの違いが効いてきます。
- 巨大なコンテキストウィンドウを持つため、関連情報は1つの巨大なMarkdownファイルにまとめておく方が効果的
- 「このログとあのログの関係性」といった文脈を失わずに済む
- 時系列データや会議議事録など、全体の流れが重要な情報に最適
- RAG的な検索挙動をするため、トピックごとにファイルを細かく分割(モジュール化)することを推奨
- ファイル名自体も検索のヒントになる(例:
coding_rules_python.md) - 明確な区分けができる技術ドキュメントやAPI仕様書に最適
3. メタデータの活用:ファイル名とヘッダーが検索のカギ
特にClaude Projectsでは、ファイルの検索精度がパフォーマンスを左右します。以下のような工夫が有効です:
- ファイル名に具体的なキーワードを含める
- ❌ 悪い例:
doc1.md - ✅ 良い例:
authentication_api_oauth2_guide.md
- ❌ 悪い例:
- Markdownの見出し(H1, H2)を適切に使う
- 見出しは検索インデックスとして機能します
- 階層構造を明確にすることで、AIが必要な情報を素早く見つけられます
- 各ファイルの冒頭にサマリーを書く
- 「このドキュメントは〇〇について説明しています」という一文を入れる
- 検索時のヒット率が大幅に向上します
どっちを使う?ケース別おすすめ活用シーン
Gemini Gemsが輝くとき:カオスな情報の海を泳ぐ
- 未整理の会議議事録の山: 「先月のどこかの会議で話した、あの件について」といった曖昧な検索。
- マルチモーダル分析: 画面録画の動画ファイルや、長時間の音声データをそのまま食わせて分析させる場合。
- クリエイティブな執筆: 長編小説の設定資料など、常に全体像を把握しておく必要があるタスク。
- 大規模ログ解析: サーバーログやアクセスログなど、パターン発見が必要な生データの分析。
Claude Projectsが輝くとき:厳密なルールを守る
- コーディング(Artifacts連携): Artifacts機能との相性が抜群です。ライブラリのドキュメントをProjectsに入れ、プレビューを見ながら開発する場合。
- 社内規定・マニュアル回答: 「就業規則」など、明確な正解があり、嘘をついてはいけないケース。
- API仕様書参照: RESTful APIのエンドポイント定義やパラメータ仕様など、正確性が求められる技術文書。
- コードレビュー: コーディング規約をアップロードし、一貫性のあるレビューコメントを生成。
実践テクニック:トークン効率を最大化する3つの秘訣
スクリーンショットや図表をそのまま入れると、視覚トークンを大量消費します。可能な限りOCRやテキスト化ツールを通してから格納しましょう。
古いバージョンのドキュメントが残っていると、AIが混乱する原因になります。「最新版のみ」をキープする運用ルールを設けましょう。
「projectsの〇〇ファイルを参照して」と明示することで、Claude Projectsの検索精度が向上します。ファイル名を覚えて指定する習慣をつけましょう。
結論:両刀使い(Dual Wielding)が最強の戦略
GeminiとClaude、どちらか一つに絞る必要はありません。
- 「発想と分析」のフェーズでは、大量の情報を文脈で捉えるGemini Gems。
- 「実装と構築」のフェーズでは、正確性と出力品質に優れたClaude Projects。
このように使い分けるのが、現時点での最適解です。まずは、お手持ちのドキュメントをMarkdown化し、それぞれの「記憶」の違いを体感してみてください。
まずは手元のJSONデータをMarkdownに変換し、Gemini Gemsにアップロードして「この資料の矛盾点を指摘して」と聞いてみましょう。その処理速度と文脈理解力に驚くはずです。

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