インフラ構築を”アニメの作画工程”として理解する:IaC的思考法【2025年版】
IaCのメリットは、「再現性の保証」と「変更履歴の追跡」です。
しかし、なぜインフラ構築がコード化されている必要があるのでしょうか? 僕はこのIaCの思想を、僕たちオタクエンジニアが慣れ親しんだ「アニメの作画工程」に例えて理解しています。
この記事では、インフラ構築をアニメ制作のプロセスに置き換え、TerraformやAnsibleといった主要ツールがどの工程を担っているのかを分かりやすく解説します。
🎨 IaCを「アニメ制作パイプライン」として理解する
アニメの作画工程は、複雑な分業体制によって成り立っています。IaCも同様に、異なる責務(ツール)を組み合わせてパイプラインを形成します。
1 「レイアウト」の決定:Terraform(インフラの土台作り)
アニメ制作の最初の工程は「レイアウト」です。キャラクターの配置、背景、カメラアングルといった、「最終的な絵の設計図」を確定させる作業です。
IaCでの役割
- Terraformがこれに相当します
なぜTerraformか
Terraformは「最終的にAWSのVPCをこのCIDRで、EC2をこのスペックで、RDSをこの構成で作りたい」というインフラの最終状態(宣言的)を定義します。これはまさに、インフラのレイアウトをコードで決定する作業です。
💡 設計思想
Terraformで作成したモジュールは、「誰が使っても同じ設計のVPCが立ち上がる」という、世界観が統一された作品設計となります。
2 「動画・仕上げ」の作業:Ansible(サーバー設定)
レイアウトが決まったら、次にキャラクターの線画を仕上げ、色を塗る「動画・仕上げ」の工程に移ります。これは、レイアウト(土台)に基づいて、細かいディテールを調整する作業です。
IaCでの役割
- Ansibleがこれに相当します
なぜAnsibleか
Terraformで作られたEC2(サーバー)に対して、「このミドルウェアをインストール」「この設定ファイルを配置」「このユーザーを作成」といった、サーバー内の細かい構成管理(手続き的)を行います。
⚠️ 筆者経験
以前、Terraformだけでサーバー内の設定までやろうとして、シェルスクリプトをheredoc地獄で埋め尽くしたことがあります。コードが読みにくくなり、デバッグ効率が激減しました。「レイアウト(Terraform)と仕上げ(Ansible)は分業する」という IaC的思考法を学んだ瞬間でした。
3 「色指定」と「美術設定」:変数と秘密情報の管理
アニメ制作では、キャラクターや背景の色を統一するために「色指定」という設定書が必要です。
IaCでの役割
- 変数(Variables)と秘密情報(Secret Manager/Parameter Store)がこれに相当します
📘 環境ごとの設定差分
環境(開発/ステージング/本番)ごとに「色(設定値)」を変える(例:開発環境ではt2.micro、本番環境ではt3.largeを使う)ことで、コード本体(作画)を共通化しつつ、環境ごとの設定差分を吸収します。
⚠️ 注意点・失敗談:「作画崩壊」を防ぐには?
IaCパイプラインにおける「作画崩壊」とは、コードと実際のインフラ(現物)がズレることです。
⚠️ 失敗談:手動変更の罠
「ちょっとした設定だから」と、本番環境のEC2にSSHでログインして手動で設定ファイルを書き換えてしまったことがあります。その結果、次にTerraformを実行したとき、手動変更した部分がコードによって元に戻され(作画崩壊)、予期せぬ障害が発生しました。正直かなり焦りました。
✅ 学びの整理
- 手動変更は厳禁: IaC管理下のインフラは、すべてコード経由でのみ変更する(これがIaCの絶対ルール)
- Stateファイル: Terraformのstateファイルは、インフラの「現在の正しい設計図」です。決して手動でいじってはいけません
📚 まとめ:IaC的思考法でインフラを美しく保つ
インフラ構築をアニメ制作の工程に当てはめて理解することで、IaCツールの責務が明確になります。
IaCの3つの工程
- Terraform(レイアウト): インフラの「設計図」を作成し、土台を構築する
- Ansible(動画・仕上げ): サーバーの「構成」を整え、アプリケーションの設定を流し込む
- 変数の管理(色指定): 環境ごとの設定差分を吸収し、一貫性を保つ
この IaC的思考法を身につけることが、再現性が高く、美しいインフラを構築する第一歩となります。

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